正社員とフリーランスの違い <お金編>

正社員とフリーランスの最大の違いはお金の動きかも知れません。
今回は、正社員として働いた時とフリーランス薬剤師になって働いた時の
お金に関する様々な違いについてお話していきたいと思います。

以前に、「フリーランス薬剤師は報酬が高くなりやすい」というお話をしましたが、
その理由についても簡単に解説していきたいと思います。

 ※ お金に関する詳しいことは税理士さんに確認してください。

目次

第1問 正社員の年収について

いきなりですが、問題です。

正社員で年収500万円の薬剤師Aさんを雇用する場合、薬局会社は雇用するだけで
1年間にどれだけのお金が必要でしょうか。

もちろんですが、500万円ではないですよ。





 答えは、約580万円です。

 この話には「社会保険料」ってものが絡んできます。
 毎月もらう給与明細を見てみると、
 その中に「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」って欄があると思います。
 社会保険料とはこれらのことです。
 “天引き” と呼ばれて最初から引かれてることが多いです。

 会社は、Aさんに渡すお金(給与明細の総支給額)以外に、
 Aさんの社会保険料の半分や雇用保険料を、別で支払わないといけないんです。

 会社がAさんのために、別で支払う金額はAさんの年収の約16%になります。
  500万円 × 16% = 80万円

 この80万円のお金はAさんの目には一度も触れることなく、
 会社から国や地方自治体へ徴収されていきます。

第2問 正社員の手取り額について

 では、正社員で年収500万円の薬剤師Aさんが、
 1年間で実際にもらえるお金はいくらでしょうか。

 もちろんですが、答えは500万円ではないですよ。




 答えは、約400万円です。

 先ほども出てきましたが、「総支給額」が丸々もらえるわけじゃないですよね。
 そこから「社会保険料」「所得税」「住民税」などが引かれて
 手取りとしてもらえるのは1年間の合計で約400万円になってしまいます。

 ということは、
 会社はAさんのために580万円も使っているはずなのに、
 最終的にAさんの手元まで来るお金は400万円まで減ることになるんです。

 いろんなところにお金が出ていってしまいますね。

第3問 会社がフリーランスに支払う金額について

 次は、フリーランスと契約する場合についてです。
 
 会社が個人事業主タイプのフリーランスで年間報酬額500万円のBさんと
 1年間の業務委託契約をして働いてもらう場合、
 薬局会社は1年間にどれだけのお金が必要でしょうか。


 もちろん、答えは500万円ではないですよ。






 と言いたいところですが、答えは500万円です。

 今回の場合、会社は雇用契約をするわけではないので、
 Bさんの社会保険料や雇用保険料を支払う必要はありません。
 なので、会社は契約通り1年間合計で500万円をBさんに渡すだけでいいんです。

第4問 フリーランスが受け取れる金額について

 個人事業主タイプのフリーランスで、年間報酬額が500万円の薬剤師Bさんが
 実際に1年間で受け取れるお金はいくらでしょうか。


 もちろん、答えは500万円ではないですよ。







 と言いたいところですが、ここも答えは500万円なんです。

 そうなんです。フリーランスの場合だと、
 いったん500万円を丸々受け取ることができるんです。
 そこから仕事にかかった経費などを差し引いていって、
 最後に残った金額に対して税金を納めるようになります。

 社会保険料も支払うんですが、
 会社員とは違う保険料(国民健康、国民年金)になるので支払う額は違います。


 さて、ここまでの問題で正社員とフリーランスの間には
 多くの違いがあることが分かってきましたね。

 次はとても大事な問題です。

第5問 会社にとっての正社員とフリーランスの違いについて

 薬局を経営する会社Xは、フルタイムで働ける正社員の薬剤師を
 年収500万円で雇いたいと考えていました。

 求人募集をかけたところ、正社員として働きたいAさんと
 フリーランスとして契約したいBさんの2人が応募してきました。
 AさんもBさんも薬剤師としては十分な能力を持っていました。

 会社の経営上では、AさんとBさんのどちらを選ぶ方がメリットがあるでしょうか。




 第1~4問の答えを思い出してみてください。

 それぞれにかかるお金を考えてみると、
  Aさんを雇用すると、年間で580万円のお金が必要。
  Bさんと契約すると、年間で500万円のお金が必要。


 ということで、答えはBさんになります。

第6問 フリーランスの方が報酬が高くなる理由について

 では、最後の問題です。今までの情報を全部合わせて考えてみてください。

 会社Xはフルタイムで働ける正社員の薬剤師を年収500万円で雇いたいと考えていました。
 求人募集をかけたところ、正社員として働きたいAさんと
 フリーランスとして契約したいBさんの2人が応募してきました。
 AさんもBさんも薬剤師としては十分な能力を持っていました。

 面接時、Bさんは薬局会社の社長に年間報酬額をあげてほしいと交渉しました。
 一方のAさんは年収アップの交渉は行わず500万円のままでいいと言いました。

 その結果、Bさんが年間報酬額550万円で薬局会社と契約することになりました。

 さて、なぜ報酬額アップの交渉したBさんの方が薬局と契約できたのでしょうか。









 答え。Bさんの交渉内容を見てみましょう。

「年収500万円の正社員を雇用すると、1年間で合計580万円のお金がかかります。
 フリーランスの僕と契約すると、かかる費用は年間報酬額だけでいいので、
 年間報酬額を500万円ではなく550万円へ引き上げてもらえませんか?

 僕の報酬を50万円引き上げても、正社員を雇用するより
 人件費を年間30万円も抑えることができます。

 また正社員と違い、僕が必要なくなった時には契約を終了してもらえれば退職します。
 正社員を雇用するよりも多くのメリットがあると思います。ぜひ契約をお願いします」


 ということでした。

お金の差を生み出すのは薬剤師としての力ではなく・・・

 先ほどの問題の中のAさんとBさんに、薬剤師としての能力に差はありません。

 正社員のAさんは給料の中から先に税金などを支払って、年間400万円しか使えない。
 フリーランスのBさんは年間550万円を受け取って、
 必要なお金を使って、残った部分から税金などを支払う。


 これだけで使えるお金には大きな差が出てます。



 でもこの大きな違いを生み出している差は1つだけなんですよね。
 それは薬剤師の仕事が、雇用契約なのか、それとも業務委託契約なのか。

 正社員として働きながら、年間50万円や100万円の昇給をしようと思うと
 かなり大変なことだと思います。
 昇給するまでに何年もの時間がかかりますよね。

 ですが、法律やお金のことについて少し勉強して、
 開業届けを出して個人事業主になってから、
 薬局と契約して薬剤師の仕事をすることで、
 年間50万円や100万円くらいは手元に残るお金が変わってきます。

 収入のアップと合わせて、個人事業主だから使える節税方法
 (小規模企業共済や経営セーフティ共済など)を利用することで、
 さらに正社員との差が開きます。



 ということで、今回は正社員と個人事業主タイプのフリーランスの違い
 についてお話してきました。

 正社員とフリーランスの差をわかりやすく伝えるために
 いろいろと省略した部分はありますが、
 フリーランス薬剤師の方が報酬が高くなりやすい理由は分かりましたでしょうか。

 また報酬については、より薬剤師の供給が少ない地域(山間地域、過疎地域、
 豪雪地域、島嶼部、周辺に薬学部が少ない地域 など)で
 フリーランス薬剤師として働くことで、報酬はより高くなります。


 

 ※ 最後にもう一度お願いなんですが、実際にフリーランスになる場合は
   きちんと税理士などの専門家に詳細を確認してくださいね。

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